あれは春が終わりそうで、暑くなってきた頃の話
寒い時期がだいぶ過ぎ去って、朝から昼にかけてはものすごい夏に近い気温になった梅雨入り前の頃のお話。
絶対にこれは書き留めて将来見せてやろうと思い書いている。娘よお前はこんな子だった。
いつもどおり元気に笑い、元気に泣いて元気にミルクを飲む。
本当に日々成長していく我が子を見るのは楽しい、特に笑って謎の言葉を発するようになってからは卑怯な位に可愛い。
こっちが疲れてイライラしている時に顔を見た時にやられると犯罪レベルで可愛い。
今日は特に暑い日で、特に室温調整が難しいこの頃だった。
我が家では一年間の9割はエアコンが付けっぱなしで過ごしている、理由はつけたり消したりするよりもグッと電気代が安いからだ。そんな中で、冷房と暖房を切り替える微妙なタイミングの季節は、扇風機と石油ファンヒーターを使い調整している。
さすがに暑くてモアモアする空気を入れ替えるために扇風機を出すことにした。
場所は我が子の寝る場所からちょっと離れた位置に置いてある、まだ歩き回ったりしないから地べたに布団を敷いた所で生活するのが彼女流。
ミルクを飲み干し布団の上で状態を起こして離してご飯の支度をしていると、何やら機嫌が良いようで一人で喋りかけているように見える。
彼女は手を伸ばして振りながら一生懸命笑いながら喋りかけている。
そう・・・・彼に・・・・・・・
扇風機に。
彼は、一生懸命に首を振りながら仕事をしている。
どれだけ彼女が頑張って手を振っても振り返すことはなく、
どれだけ彼女が頑張って笑い喋りかけても返事はしてくれず、彼女には絶対に構ってはくれない。
一生叶うことのない、初恋の相手
夜寝るときも扇風機にひっきりなしに話しかけて手を振っている。
彼は今日も深夜残業だ。
2,3時間くらい遠くで彼の背中を見守りながら眠りにつく。
きっと、追いかけられるよりも追いかける恋が好きなのだろう。。。
たまに寂しくなって泣くこともあるようだがそれでも追いかけている。
一生叶うことのない事を知っている親から見ていているととても切なく思う。
そんなある日、手の届く位置まで彼がやってきた。
彼はそんなことを気にせず今日も背中を向けて働いている。彼は休みがないようだ。
機嫌よく喋るのかと思えば、少し彼女は機嫌が悪いようで泣いてしまった。
どうやら近くにいたのにかまってくれないから泣いてしまったのだろう。
いつも通りの距離に戻すと、いつの間にか彼女の機嫌は直り、また彼を見つめている。
若くしてお互いのちょうどいい関係の距離を知っているようだ。
久々に彼が休日をもらえたみたいで休んでいる。最近は暑かったり寒かったりだったし、
わたしは足を広げられ、今この瞬間綿棒をさされている。わたしは極度の便秘症、だから定期的に綿棒を入れられる。
綿棒はオイルで湿っているんだけど入れられて中でグリグリ回されるととても痛い。
これが終わったらきっと彼と会話ができる。。。。そう信じていつも頑張っているけど今日は何だか耐えれない。
涙が出てくる
彼に手を伸ばしてみたけど、こっちを向いてもらえない、ただただわたしに背中ばっかり向けている。
それでも夜は一緒に入れるから会話が出来て楽しかったし、ずっと続けばいいと思っていた。
ある日、彼はわたしの目の前から姿を消した。
今日もわたしは元気にミルクを飲んでいる。
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